風を感じて調布の路地を歩く休日旅行記

週末、いつものカフェで豆を挽く香りに包まれて過ごしていた。
友人が撮影したフィルム写真の色合いに惹かれて、僕も久々にカメラを手に取る。
日常の中にある小さな美しさを切り取りたくなる衝動が胸をついた。
さっそく準備を整えて、調布の古い街並みを巡る散歩に出かけることにした。

深大寺へ向かう参道には、古い水車小屋の名残が目印となる。
くすんだ瓦屋根の土産物屋をのぞきながら歩くと、
石畳の合間から緑が顔をのぞかせて、どこか懐かしい気分に浸れる。
カメラのレンズ越しに見ると、時間がスローモーションで動いているようだ。

参道のそば屋では、職人が手打ちするそばを眺めていたら、
湯気の中からさっくりとした音が聞こえてきた。
ひとくち啜ると、十割ではないのにふわりと広がる風味が味蕾をくすぐる。
大きな水車の前で一枚、友人にシャッターを切ってもらった。

歩き疲れたら、神代植物公園のベンチに腰かける。
大木の下を吹き抜ける風がやわらかく、目を閉じると鳥の囀りだけが際立って聴こえてくる。
バラの香りに誘われて歩いていくと、淡い色の花びらが舞い落ちる瞬間に出くわすこともある。
心がふっと軽くなるこの感じ、都会の喧騒から切り離された特別な時間だ。

子どもの頃に読んだ妖怪漫画を思い出しながら、鬼太郎茶屋の前でしばし立ち止まる。
小物が並ぶ店内からは、懐かしさだけでなく、ちょっとした冒険心もくすぐられる。
お土産に目を奪われつつ、友達とは「次はどこ行こうか」と話が弾む。
他愛ない会話の中で、新しい発見をするのが旅の醍醐味だろう。

うっすらと日が傾き始めたころ、多摩川河川敷へ。
野球少年たちの歓声、河原で遊ぶ親子の笑い声が空気を満たしている。
草むらに寝転んで空を見上げると、雲がまるで絵の具を置いたように形を変えていく。
そのうち友人が「もっと遠くへ行こう」と声をかけてきた。

ここまでで十分に満たされた気分だったけれど、
ふと思い出したのが調布の街を気軽に巡れる道具の存在。
荷物が増えても平気で街を移動できるアイテムがあるなら、
もっと自由に新しい路地や公園をめぐれるはずだ。
それがレンタルで借りられる乗り物だと聞いたとき、心が踊った。

車輪付きの乗り物にまたがると、
エンジン音は思ったほど大きくなく、風切り音が心地よい。
狭い道も颯爽と抜けられ、いままで足を運びにくかった調布飛行場のそばまで簡単に到達できる。
小型機の離陸を間近で見学したあと、
味の素スタジアムの周りをゆっくりと一周してみる。
夕暮れ時のスタジアムは、日中とは違った静けさをまとっていて、不思議な魅力に満ちていた。

帰り道、深大寺のあたりを再び通りかかると、夜の灯りがぼんやりと浮かび上がっている。
参道の冷気が心地よく、今日の冒険を優しくねぎらってくれているようだ。
自分のペースで好きな場所へ自由自在に動ける楽しさ。
それを教えてくれたレンタルバイクに感謝しつつ、また次の休日に何を撮ろうかと思いを巡らせる。